2018年は「バーチャルYouTuber(Vtuber)」にとって大躍進の年でした。昨年はネット流行語大賞にも選ばれ、その存在感は2019年になっても日増しに大きくなっています。
本記事は「Vtuber(Vチューバー)ってなに?」という方に向けて
「これまでのYouTuberと何が違うのか」
「やり方や仕組みはどうなっているのか」
「最低限は知っておきたいおすすめVtuber」
について紹介しています。
バーチャルYouTuberとは?(Vtuber:Vチューバー)
Vtuberは「バーチャルYouTuber」の略語で、2Dまたは3Dのアバターを使って動画投稿や配信活動を行っている人の総称です。
基本的には「YouTuber」の派生語ですが、YouTube以外の動画配信プラットフォームを拠点として活動している人もいます。
火付け役は「キズナアイ」
ブームの火付け役は2016年12月に活動を開始した「キズナアイ」です。
自身をバーチャルな存在とし、「バーチャルYouTuber」という単語をはじめて使ったのもキズナアイです。
2017年12月には、キズナアイのチャンネル登録者数が100万人を突破。そのことがYahoo!ニュースでも取り上げられるなど、Vtuberのジャンル全体がネット上で爆発的に流行し始めたのもこの時期です。
『バーチャルyoutuber年表』黎明期からブームまでVtuberの歴史についてこれまでのYouTuberとは何がちがうのか?
生身で配信を行うYoutuberとの最大の違いは、やはりアバターを使用している点です。
しかし配信者がアバターを使用し動画配信することは、思った以上に様々な意味合いがあるかもしれません。
マーケティング的な意味合い
Vtuberは既存の大手企業や自治体からマーケティング的な意味合いでも注目されています。
一番人気のキズナアイは「訪日促進アンバサダー」に就任しているほか、Vtuberが企業と自治体に起用されるのも珍しくなくなりました。
大手企業ではサントリーが公式Vtuberとして「燦鳥ノム(さんとりのむ)」を、ロート製薬も公式Vtuber「根羽清ココロ(ねばせいこころ)」をデビューさせており、茨城県ではVtuberの「茨ひより」がPR担当として起用されています。
このように企業や自治体がVtuberに注目する背景には、以下のようなメリットがあるからだと考えられます。
- タレントよりもスキャンダルリスクが少ない
- 企画に合わせて動くことが出来る
- プロモーションに合わせた造形が可能
まず、Vtuberはタレントやインフルエンサーよりもスキャンダルリスクが低く、企業にとって安心感があります。
生身の人間を使ったプロモーションにはスキャンダルリスクが付きまといますが、Vtuberは基本中の人が非公開で、視聴者からみたキャラクターと演者は一定レベルで切り離されています。
そのため、中の人のスキャンダルがキャラクターイメージに影響することは基本ありません。
次に、Vtuberは企画単位で柔軟に動くことができます。
アニメキャラクターは既に作品内でのイメージが付いているため、イメージから大きく外れた企画への参加や、ライブ配信などのリアルタイム性のある企画には参加しにくい特性があります。
その一方でVtuberにはアニメキャラクター等にはない柔軟性があり、仮想世界を飛び出したリアルでのロケ企画などへの挑戦もみられます。
キャラクターでありながらタレントやインフルエンサーのような特性も兼ね備えています。
加えて、Vtuberはプロモーションに合わせた造形が可能です。
例えば、サントリー公式Vtuber「燦鳥ノム」のキャラクター設定やビジュアルには、サントリーの要素が随所に詰め込まれています。
投稿している動画自体は「ゲーム実況」や「歌ってみた」など、YouTubeの人気動画カテゴリーのものが多いですが、普段の活動そのものが継続的なプロモーションになり、投稿した動画や集めた人気は蓄積され、資産性があります。
配信者や視聴者にとっての意味合い
では配信者や視聴者にとってアバターを使った動画配信は、どのような意味合いがあるのでしょうか。
代表的なものとして、以下のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
- バーチャルならではの表現が可能
- 多様で双方向性のあるファン活動
- なりたい自分になることが出来る
まず、Vtuberはバーチャルならではの表現が可能です。
現実では不可能なことや、実現に多大なコストがかかるような撮影も比較的低コストで行うことができます。
次に、ファン活動が多様で双方向性があります。
単に動画を見るだけでなく、「ファンアートを描く」「バーチャル世界で交流する」「金銭的な支援をする」「グッズを買う」「イベントに参加する」等、好きなVtuberに対するファン活動の在り方は様々です。
またファン活動の多くには双方向性があり、ライブ配信ではコメントによるコミュニケーションが盛んに行われているほか、ファンアートの投稿等にも反応やコメントが返ってくることがあります。
憧れのキャラクターのファンアートを描き、そのフィードバックが本人から直接返ってくるのは、アニメキャラクター相手ではありえなかったことです。
加えてバーチャルの世界では、なりたい自分になることできます。
アバターを使用した動画配信というスタイル自体は新しいものではありませんが、これまではコストや技術面による参入障壁があり、個人で本格的に活動するには高いハードルがありました。
しかし昨今のVtuberブームにより、個人でも活動しやすいプラットフォームやサービスが多く誕生し、今ではスマホ一台でもかなり本格的な活動ができるようになっています。このような変化は「動画配信をしたいけど顔出しはしたくない」といったニーズも満たし、多くの新しいVtuberの誕生に繋がりました。
このように現在のVtuberブームは、一部の人気Vtuberがけん引するだけではなく、ファン活動の多様化と参入障壁の低下により、誰でも参加できる新しいライブエンターテイメントとしての文化になりつつあり、単に「配信者が人間からキャラクターになった」という以上の意味合いがあると思われます。
やり方や仕組み、作り方
Vtuberは基本的に、リアルの人間の体の動きや表情を2Dもしくは3Dのアバターに反映させることによって配信していますが、その撮影形式は多岐にわたります。
ここでは、Vtuberの代表的な撮影形式のやり方と仕組みを紹介します。
撮影形式
撮影形式は主に4つに分けることが出来ます。コストはピンキリでそれぞれに一長一短の特徴があります。
スマホ
スマホは最も低コストでVtuberになる方法の一つです。
アバターメイクから配信まで行えるアプリが既に沢山登場しており、かなり本格的な活動を行うことも可能です。
見るだけじゃない!スマホだけでVtuberにもなれるライブ配信アプリまとめiPhoneXを使えばスマホだけで高度なフェイストラッキングが出来るほか、それ以外のスマホでも、声に合わせてキャラクターの口が動くリップシンク機能などにより、生き生きしたキャラクターの表現も可能です。
欠点としては、ボイスチェンジャーが使えないため声が地声になってしまうことと、アバターのカスタマイズに制限があることです。それでも最近ではかなりオリジナリティのあるアバターをスマホだけでも作れるようになってきました。
スマホを使った代表的なVtuberとしては「にじさんじ」のメンバーが挙げられます。
WEBカメラ
コンピューターにカメラがあれば、表情をトラッキングするソフトをいれるだけでVtuberになることが出来ます。
代表的なソフトは「FaceRig」で、価格は1480円。プラス100円で「Live2D」に対応させることができ、2Dのアニメキャラクターのようなアバターを使用することもできます。
PCのスペックもあまり必要とせず、一般的なノートPCでも配信が可能で、低コストで導入できます。
欠点としては、アバターが胸から上に限られる点や、オリジナルアバターを使用する場合はキャラクターの絵を用意し、Live2Dに対応させる作業をしなければならず、若干のスキルや知識が必要になることです。
FaceRigを使った代表的なVtuberとしては「バーチャルおばあちゃん」が挙げられます。
低スペックPCでもVtuberになれるFacerigとは?VR機器
「HTC VIVE」などのVR機器を使用すれば、かなり本格的なVtuber活動ができます。
2つの手持ちコントローラーとヘッドセットのみで、全身の3Dモデルを動かすことができ、別売りのトラッカーを付けるとより詳細な足腰の動きを反映させることも出来ます。
かつては、3DCG等に対する専門的な知識が必要でしたが、現在では「Vカツ」や「VRoid」といった無料で本格的な3Dモデルを作成できるサービスが登場したほか、「バーチャルキャスト」のようなVR機器を使用しての配信サービスも充実してきており、技術にあまり詳しくない人にとっても、活動をはじめやすくなりました。
個人で本格的なVtuber活動をするのであれば、一番おすすめな撮影形式だといえます。
欠点としては、頭にヘッドセットを付けるため細かい表情表現には適さないことと、VR機器に加え、高性能なPCを必要とし、それなりにコストがかかることです。
VR機器を使った代表的なVtuberとしては「ねこます」さんが挙げられます。
2019年1月にラスベガスで開催された電子機器の見本市であるCESにて、HTCから視線追跡の機能を搭載した「VIVE Pro Eye」が発表されました。これによりヘッドセットを付けたままアバターに瞬きや視線の動きを反映させることができ、より人間らしい表現ができることになります。価格や詳細は2019年後半に発表とのことです。
モーションキャプチャ
全身にセンサーを付けるタイプのモーションキャプチャで、主に企業系のVtuberが使用しており、代表的な製品に「Perception Neuron」があります。
手足の動きはもちろん指先の動きまでトラッキングでき、顔も隠れないので細かな表情の動きも反映させることが出来ます。
センサー自体の価格が高く、動けるだけのスペースが必要になるほか、性能の良いPCも必要になるため、個人での活動に取り入れるには非常にハードルが高いといえます。
恐らく「キズナアイ」さんや「電脳少女シロ」さんなどはこのようなモーションキャプチャを使っていると推察されます。
まずは知っておきたい、おすすめVtuber5選
まだVtuberの動画をほとんど見たことがないという方は、まず以下の5名をおさえておくのがおすすめです。
特に、最初に紹介する5名はVtuberファンのなかで「四天王」と呼ばれており、最初期から活動しブームをけん引してきた人たちです。
TV等へのメディアへの露出が多く、大手企業コラボやリアルイベントへの出演にも多数参加しており、Vtuberに興味がない人でも目にしたことがあるかもしれません。
紹介順は活動開始が早い人からになっています。
1.キズナアイ
はじめて「バーチャルYoutuber」を名乗り、まさに現在におけるVtuberジャンルを確立した人です。
人気と知名度はVtuberのなかでも圧倒的で、キズナアイなくしてVtuberを語ることはできないでしょう。
投稿頻度も高く、ほぼ毎日何らかの動画を投稿しています。初めての人は上記のような総集編動画から見始めると良いと思います。
他のVtuberからも「アイちゃん」「親分」といった愛称で親しまれています。
2.電脳少女シロ(でんのうしょうじょしろ)
電脳少女シロは2017年6月から活動を開始しており、最も初期から活動しているVtuberの1人です。
ゆるふわで可愛い雰囲気とは裏腹に、ゲーム実況では嬉々として殺戮を行っているギャップ等から話題を呼びました。
英語が堪能で、全編英語の動画も公開しています。
3.ミライアカリ
キャラクターデザインは初音ミクをデザインしたことでも知られる「KEI」さん。
性格は明るく前向きな正統派でかなり万人受けするVtuberの1人だと思います。下ネタに寛容なスタイルです。
かつてミライアカリのチャンネルは、短編アニメを投稿していた「アニメ娘エイレーン」というチャンネルでした。
2017年10月にミライアカリプロジェクトが発足し、エイレーンは企画役として裏方に転じました。たまにミライアカリの動画内に登場します。
4.バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん(ねこます)
バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさんこと「ねこます」さんは、今回紹介する中で唯一個人で活動しているVtuberです。
見た目は女の子であるにも関わらず声はおじさんのままで、活動当初はかなり特異な存在でしたが、そんな変わった活動スタイルが話題を呼び、人気が急上昇しました。
人気Vtuberのほとんどが、企業や組織単位で運営されているVtuberだったブーム最初期から、撮影や編集の全てを個人で行なっており、ねこますさんの活動は多くの新規個人Vtuberの参入を促しました。
現在YouTubeチャンネルはねこますさんの手を離れておりチャンネル名も変更されていますが、他のサービスで不定期に活動を行なっています。
5.輝夜月(かぐやるな)
輝夜月はVtuberが盛り上がり始めた2017年12月に活動を開始したVtuberです。
見た目からは想像もつかない特徴的な声と、シラフとは思えないほどの異様に高いテンションからなる中毒性の高い動画が話題をよび、短期間で多くのファンを獲得しました。
その勢いは活動開始からわずか3週間でチャンネル登録者数20万人を突破するほどです。
投稿頻度は高くないものの、動画の平均再生回数は100万回を超え、キズナアイに次ぐ人気度を誇ります。