本記事では、VRゴーグルを買う前に知っておきたい知識とVRの最新動向、そして目的別のおすすめ製品を紹介しています。
目次
VRゴーグルを買う前に知っておきたい5つのこと
VRゴーグルの種類と特徴
VRゴーグルの種類は大きく分けて3つあります。「PC接続型」と「一体型」と「スマホ利用型」です。
PC接続型VR
PC接続型VRは、VRゴーグル単体では機能せず、高性能なPCに接続することで使用します。
グラフィック処理をPCで行うため、高品質なVR体験が可能で、コンテンツの量も多く、用途の幅が圧倒的に広いのが特徴です。
ただし、価格が単体で「約7万円~」することからPCの費用と合わせると、導入コストが20万円前後と高額になります。
一体型VR
一体型VRは2018年から登場し始めた、比較的新しいVRゴーグルのタイプです。
何にも接続する必要がなく、セットアップ不要で、電源を入れたらすぐにVR体験ができるのが特徴です。
価格も製品によっては「2万円台~」と安く、あらゆる面で手軽なVRゴーグルです。
スマホ利用型VR
スマホ利用型VRは、ゴーグル自体にはスクリーンが付いておらず、スマホを使用することで簡易的なVR体験を可能にするものです。
上記2つに比べ、圧倒的に低価格で「数千円~」から購入することが出来ます。
ただし、VR体験のクオリティはあまりよくなく、一時はその安さと目新しさから飛ぶように売れましたが、最近は下火になっています。
出来ることが大きく異なる3DoFと6DoF
VRには「3DoF」と「6DoF」という性能の違いがあり、それぞれ出来ることが大きく異なります。
DoFとは「degree of freedom」の略で、直訳すると「自由度」という意味です。
そして3DoFは「3方向への自由に動けること」、6DoFは「6方向に自由に動けること」を示しています。
しかし「3方向」「6方向」と言われてもどのような違いがあるのかピンと来ないかもしれません。
そこで、いらすとやが公開している「3DoF」と「6DoF」のイラストが役に立ちます。
3DoFは頭の回転や傾きのみを検知し、360度の映像やゲームを楽しむ事ができますが、現実世界での動きをVR内に反映することはできません。
例えば、3DoFのVRでは、振り向くことはできても、しゃがんだり近いづいて見たりすることはできません。
これに対し、6DoFでは頭の回転や傾きだけでなく、上下左右の移動も検知します。
よって6DoFのVRでは、現実での動きがよりVR内での動きに反映されるため、没入感が高くクオリティの高いVR体験をする事ができます。
3DoFと6DoFのVRゴーグルの視界を、現実空間に当てはめたイメージです。
3DoFは回転のみで位置を検出しないので、頭が動くとVR世界も一緒に移動する。
話題のケーブルレスHMDだと #OculusGo は左、#MirageSolo は右、だそうです。#VR #3dcg pic.twitter.com/s3vFL2WZOk— equal One (@ion_equal1) June 2, 2018
また、この3DoFと6DoFの違いは、ゴーグルだけでなく手元のコントローラーにも適用されます。
6DoFのコントローラーは両手に持つことで、現実での手の動きをそのままVR内で再現することができますが、3DoFのコントローラーは回転しか検知しないため、自由にVR内で手を動かすことはできません。
以上のような特徴から、3DoFのVRは映像鑑賞やVR空間でのコミュニケーションに向いている一方で、体験型のVRゲームなどには不向きだといえます。
今後の主流は一体型VRゴーグル
VRというと本格的なPC接続型を思い浮かべる人が多いかもしれません。
しかし、これまで最も売れたVRゴーグルはスマホ型の「GearVR」で、その次に売れたのがPlayStationVR(以下PSVR)です。
PC接続型のVRゴーグルは没入感の高さや用途の広さでは最高ですが、販売台数はPSVRに遠く及んでいません。
単純に安い製品が売れたと考えることもできますが、どちらかというとPC接続型が、VRゴーグルとは別に高性能なPCを必要とすることが大きなハードルとなっているようです。
実際、発売当初44,980円(税別)だったPSVRが、64,250円(税別)のHTCVIVE(PC接続型)の4倍売れたことを考えると、より手軽に楽しめるVRに多くの需要があると考えられます。
その点、一体型のVRゴーグルは、PCやスマホを必要とせず、本体のみでVR体験ができるという圧倒的な「手軽さ」があります。
そして価格も「2万円台~」と導入コストが安く、これまで個人でVR購入をためらう原因だった、
- 高額な導入コスト
- 設置や起動の手間
といった部分が解消されています。
また、一体型VRの高性能化が非常に速いスピードで進んでいます。
2019には6DoFのVR体験ができる一体型VRゴーグル「OculusQuest※」の発売が予定されており、各社の力の入れようからみても今後の主流は一体型VRになっていくことが予想されます。(※詳しくは後述)
待つことも選択肢の一つ
VRゴーグルは非常に速い製品サイクルで高性能化が進んでおり、1~2年の期間で同じ会社から新製品が発表されています。
そのため、タイミングによっては「新製品の登場を待つ」というのも選択肢の一つです。
また、VRがソフト・ハードの面で充実してきているのは確かですが、それでもまだ発展途上の段階であるということも認識しておく必要があります。
VRゴーグルの種類は多い一方で、コンテンツには互換性が無かったり、そもそも利用できるコンテンツがかなり限られている製品もあります。
どうしても体験したいコンテンツが無いのであれば、ソフトが充実するまで購入を待つのも考えてみてはいかがでしょうか。
既に購入を決意しているのであれば、購入前に
- それぞれのVRゴーグルで出来ること
- 対応コンテンツ
- 今後発売が予定されているVRゴーグル
については知っておくことをおすすめします。
VR体験に影響する3要素
VRは体験的なものなので、スペック表をみても各製品のスペックの違いがVR体験にどのような影響を及ぼすのか、ピンとこない人もいるのではないでしょうか。
そこで、最後にVRゴーグルを選ぶ上で、特にVR体験に影響を及ぼす項目について解説したいと思います。
(※VR体験に特に影響を与える3DoFと6DoFについては前述したためここでは省略します。)
解像度(画質)
まずは解像度ですが、もちろん高いに越したことはなく、解像度が高ければ高いほど、より細かな描写まで見ることができるためVR体験の質も高くなります。
ただし、VRゴーグルには1枚のディスプレイを両目で見るタイプと、片目ずつ2枚のディスプレイを見るタイプがあるため、片目あたりの解像度を確認する必要があります。
例えば以下のスペック比較表を見てください。
製品名 | HTC Vive | PSVR |
解像度 | 1080×1200 (2枚) | 1920 ×1080(1枚) |
一見するとPSVRの解像度のほうが高そうですが、HTC Viveの方は1080×1200のディスプレイが2枚付いているのに対し、PSVRのほうは1920 ×1080が1枚です。
つまり、HTC Viveは片目ごとに1枚ずつのディスプレイが用意されているのに対し、PSVRは両目で1枚のディスプレイを見ることになります。
よってPSVRの片目あたりの解像度は960×1080程度となり、HTC Viveのほうがより高解像度のVR体験ができることになります。
ちなみに、現在VRゴーグルに使われているディスプレイの種類は「有機EL」と「液晶」の2種類がありますが、「有機EL」は描写速度がとても速い一方で「液晶(LCD)」に比べ解像度が劣る特徴があります。
そのため、映像観賞がメインになりがちな3DoFのVRゴーグルに「液晶」が使われ、ゲーム等で素早い描写を必要とする6DoFのVRゴーグルには「有機EL」が使われる傾向があります。
視野角
視野角は画面が見える角度の広さを表してます。
(出典:https://www.think-sp.com/2013/08/07/tw-tyuushinshi/)
一般的に私たち人間の視野は水平方向で200°です
そのため、VRゴーグルの視野角も200°あるのが望ましいですが、現在のVRゴーグルの多くは、一部の非常に高額な製品を除いて110°程度となっています。
このように聞くと、とても視野が狭いように感じるかもしれませんが、人間の視野のなかではっきりとものが見えるのは、せいぜい中心の20°程度であり、視野角が110°あれば、VR体験の質が著しく低下することはありません。
リフレッシュレート
リフレッシュレートは1秒間に何回画面を書き換えることができるかを表す数値で単位は「Hz」です。
数字が大きいほど映像がなめらかに動き、逆に低いとカクカクした映像になります。
VRで違和感なくゲーム等を楽しむには「90Hz」必要とされており、それ以下になってくると激しいVR酔いの原因になりえます。
目的別おすすめVRゴーグル
PC接続型VRゴーグル
PC接続型のVRゴーグルは、価格が高くてもできるだけ高品質なVRを体験したい方、また人気VRコミュニケーションツールである「VRChat」を利用したい方、本格的なVtuber活動をしたい方におすすめです。
メリット
- 没入感が高く高品質なVR体験ができる
- グラフィック処理をPCで行うため高負荷なゲームもプレイできる
- コンテンツが多く、用途の幅も広い
デメリット
- 導入コストが高い(単体で7万〜、PCと合わせて20万前後)
- 設置や起動に手間がかかる
- ある程度のスペースが必要
「HTC VIVE」と「Oculus RIft」
「HTC VIVE(HTCバイブ)」と「Oculus RIft(オキュラスリフト)」は、どちらも高品質なVR体験を可能にするVRゴーグルで、導入コストさえ気にならないのであれば現在最もおすすめできる製品です。
「Oculus RIft」は米フェイスブック傘下のOculus社が2016年3月に発売したもので、現在のVRブームの火付け役にもなりました。
「HTC VIVE」は台湾のHTC社が2016年4月に発売したもので、両者の製品は機能面においてほぼ同レベルです。
どちらも、センサーを設置することでプレイヤーの位置を認識することが可能で、付属のハンドコントローラーを利用することでVR内で自由に移動したり手を動かしたりすることが可能です。
また、VRゴーグルに付いているディスプレイの画質や視野、リフレッシュレート※も同じです。(※一秒間に何回画面が書き換わるか。数字が高いほうが映像がなめらかに見える。)
ではHTC VIVEとOculus RIftの間で何が違うのか、という点についてですが、重要な部分では「価格」「対応コンテンツ」「センサー」が違います。
まず「価格」についてですが、HTC VIVEが69,390円(税別)に対し、Oculus Riftが49,464(税込)と、2万円ほどの価格差があります。
次に「対応コンテンツ」についてですが、Oculus RiftとHTC Viveでは、利用できるゲームプラットフォームが異なります。
ゲームを購入する場合、Oculus Riftは「Oculus Store」で、HTC Viveは「Steam VR」で購入することになります。
メジャータイトルはどちらでも利用可能な場合が多いですが一部のタイトルで「片方に対応しているがもう片方では対応していない」なんて場合があります。
単純なコンテンツ数だと「Oculus Store」よりも「Steam VR」の方が多いです。
最後に「センサー」についてです。HTC VIVEとOculus RIftは部屋に専用のセンサーを設置することによりプレイヤーの位置を検出するのですが、センサーのタイプが若干異なります。
どちらのセンサーのほうが大きく優れているというわけではありませんが、HTC VIVEの方が自由度が高く、拡張性に優れています。
「HTC VIVE pro」
「HTC VIVE pro」は「HTC VIVE」の上位モデルで2018年4月に登場しました。
大まかな点は「HTC VIVE」と同じですが「画質」と「音質」が向上しました。
ただし、価格は単体で17万超と、個人ではなかなかに手の出しにくい値段になっています。
「PlayStation VR」
PC接続型ではありませんが、PSVRも紹介しておきます。
PSVRはゲーム機であるPS4と接続することで、PC接続型と同じく高クオリティなVR体験が楽しめます。
価格は34,980と、他のPC接続型と比べ安く、PS4の価格と合わせても導入コストが10万円を下回るため、費用面で優れています。
対応コンテンツもそこそこあり、既にPS4を持っている方にとってはかなり良い選択肢の一つだと思います。
ただし、画質や視野といった面ではPC接続型に劣る点と、用途面における幅広さはPC接続型に遠く及びません。例えばVtuber活動や、VRChatの利用には使用できません。
一体型VRゴーグル
一体型VRゴーグルは、できるだけ安価で手軽に本格的なVRを体験したい方、VRを活かした映像観賞をしたい方におすすめです。
メリット
- 導入コストが比較的安い(2万円台~)
- 本格的なVR体験ができる
- センサーやコードがなく、とにかく手軽
デメリット
- まだコンテンツが少ない
- 高負荷なグラフィック処理は苦手
- 充電式のため超長時間利用は不向き
「Oculus Go」(オキュラスゴー)
「Oculus Go」はフェイスブック傘下のOculusが発売している「一体型VRゴーグル」です。
発売は2018年5月と比較的最近で、現在のところ最も売れている一体型VRです。
特徴は低価格と圧倒的手軽さ。値段は税込み2万円代前半からと、お求めやすい価格になっており、PC接続型のように煩わしいコードや設置・起動の手間がありません。手に取ってすぐVRを始めることができます。
ただし機能面としては、高さや動きはまでは検知しないため、360度の視界を見ることが出来る一方で、近いづいてみたり、移動したり、現実での動きをVR空間内で再現することはできません。
そのためか、「Oculus Go」はVRゲーム等には向いておらず、メインの利用が映像観賞になっています。
しかし、対応コンテンツにネットフリックス等があるため、VR空間内に大きなスクリーンを表示して疑似的なホームシアターとして楽しんだり、寝転がりながら映像を観たりでき、映像を見るのが好きな人からは高評価です。
スマホ利用型VRゴーグル
スマホ利用型VRゴーグルはとにかく安く自宅でVRを体験してみたい人向けです。
ただし、クオリティがかなり低くなってしまう傾向があるため、正直あまりおすすめはしていません。
VRを安価で体験するという意味では、VR施設で体験するのも一つの選択肢かもしれません。
メリット
- 圧倒的安さ
デメリット
- VR体験としては微妙なものが多い
「Galaxy Gear VR」はこれまででもっとも売れたVRゴーグルです。 対応のGalaxyスマートフォンをはめ込むことでVR体験ができます。 特徴はコンテンツが豊富なことと、Galaxy用に作られているためピッタリサイズで、スマホ利用型の中では比較的没入感も高いことです。 ただし価格が13,900円(税込)と、スマホ利用型の中では比較的高価な部類です。 Canbor VRゴーグルは、ほとんどのiPhoneやandroidに対応したVRゴーグルです。 価格も3000円前後と安価なのにもかかわらず、意外と作りもしっかりしていて装着がしやすく、Bluetoothコントローラーも付属しています。 スマホで手軽にVRを試してみたい場合にはおすすめです。 ハコスコはとにかく安価にVRっぽい体験をしてみたい方におすすめかもしれません。 ここまでくるともはやVRと呼んでいいのか微妙なラインですが、価格も700円なので、ちょっとしたおもちゃを買う感覚なら悪くないと思います。 「OculusQuest」はOculusが発表した、次世代の「一体型VRゴーグル」で、2019年春の発売が予定されています。米国向け価格は399ドルで、日本向け価格は45,000円ほどと予想されています。 「OculusQuest」の特徴は、一体型であるにも関わらず、これまでPC接続型でしか体験できなかった高品質なVR体験ができることです。 外部センサーの設置を必要とせずに、頭の向きだけでなく、高さや移動も検知するため、VR空間内でしゃがんだり移動したりすることが出来ます。 また、付属の2つのハンドコントローラーで、手のトラッキングを行うため、VR空間内で自由に手を動かすことも可能です。 そのため、メインの用途が映像観賞になっている「Oculus Go」に対し、「OculusQuest」は本格的なVRゲーム等の用途が期待されます。 PC接続型の「Oculus Rift」との大きな違いはグラフィック処理能力で、処理と動作をPCに任せるPC接続型と比べると、グラフィックのクオリティは落ちると予想されます。 しかし、それでも「OculusQuest」は比較的安価に全身を動かすことのできるVR体験ができるという点で画期的な製品だといえます。 「Vive Pro Eye」は2018年に発売されたVive Proに視線追跡機能を加えたもので、2019年の1月に発表されました。 ゴーグルの内部に複数のセンサーを搭載しており、ユーザーの視線の動きを追跡することで、視線を使った様々な機能を利用することができます。 例えば、視線を向けることによってメニューを選ぶ等のコントローラーを使わない操作の実現、視線や瞬きをアバターに反映させることで可能になるより人間らしい表現、視線を向けている部分を優先的に高画質で表示する機能といったものです。 「Vive Pro Eye」の発売日は第2四半期に予定されており、価格はまだ未定となっています。(2019年1月現在)「Galaxy Gear VR」
「Canbor VRゴーグル」
「ハコスコ」
今後発売予定のVRゴーグル
「Oculus Quest」
「Vive Pro Eye」